紺碧の空

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2008/11/22 14:53

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紺碧の空〜北海の落日(前編)〜

2007/11/14 18:00

3月29日
午後12時33分
愛機の操縦席に収まり、いつも通りの手順でチェックリストを確認。
その間に滑走路からは、「第1教導団」のF-22Aや「ネーヴェル隊」のF-35Cが2機ごとに次々と轟音を響かせながら離陸していく。
それを横目に見ながら、地上員に合図を送り、計器・舵・エンジン音など機体各所の具合に注意を配りつつ、第34飛行隊(プリースト隊)のしんがりに付いてタキシングに入る。
『エルベ1、こちらコントロール。編隊の離陸を許可する。』
『エルベ1、ヤヴォール。』
管制塔との短いやり取りの後、マーシャル少佐率いる第30飛行隊が滑走を開始した。
たちまち、編隊4機が同時に地面を蹴って編隊を崩すことなく上空へ消えていった。
第31飛行隊…32飛行隊と続いて、我々第34飛行隊もガルテンブルク基地の滑走路を蹴って空に駆け上がる。
攻撃隊は高度9,000フィートで空中集合、針路を西にとって進撃を開始した。

この頃すでにユトレヒト基地とからは、SU−37戦闘機12機に護衛されたSu-30MKで編成される攻撃隊8機が離陸し進撃中。ハイマート基地からもTu-22M/MR爆撃機20機が離陸を開始していた。
順次攻撃隊を送り出すことで、敵の船団に対して波状攻撃をかけようという目論見だ。

離陸から15分。編隊は北海を右手に見ながら飛行を続ける。
我々の行く手には大小の雲が散らばって浮かび、眼下には北風に全ての熱を奪われたような黒ずんだ大地が広がっていた。
護衛機の編隊は、我々を先導するように3,000フィート程上空で少し間隔を取った編隊を組んで飛行している。
コール音の後、少し訛りのある声が耳に飛びこんできた。
『こちらAWACS、ツューゲル。エルベ1指揮下の各小隊、貴編隊はこちらの管制下に入った。
現状態を維持し飛行せよ。』
『エルベ1、ヤヴォール。』
マーシャル少佐が淡々と答える。
AWACSまで動員しているという事実が、否応なしに私を緊張させた。

午後1時38分
飛行開始から1時間以上が経過。
眼下、そして目の前の風景はほとんど変わりがない。なんとも…気の滅入る、殺伐とした光景だ。
その光景に追い討ちをかけるように、再びコール音が響く。

『こちらツューゲル、ユレイヒト基地から離陸した攻撃隊が敵防空戦力と交戦を開始した。
貴隊も10分後に交戦エリアに入る。各機、安全装置解除。高度を6,000フィートに下げつつ攻撃態勢に入れ。
オルクス隊は、攻撃隊に上空へ。他の隊は現在の高度を維持し飛行せよ。』
『エルベ1、ヤヴォール。F−2各機へ聞こえたな?射撃隊形を取りつつ降下開始。』
『ヒンメル1、ヤヴォール』...『マギアー2、ヤヴォール』...『ニクス4、ツザーゲ』
編隊各機が次々に答える。
『プリースト4、ヤヴォール。』
私も無線のスイッチを送受信に入れ編隊長に返事を返す。
同時にハンス機の右後方に付き、その動きにならって降下を開始する。
隊形は広く間隔を取ったアローフォーメーション。
第34飛行隊4番機の私は、その左翼の一番端に位置することになる。
僚機に追従しぐんぐん高度を下げながら、コックピット内の「高度計表示切替」スイッチをひねり、高度表示を気圧高度表示からレーダー高度表示に切り替える。低空での飛行が考えられる作戦には必須の操作だ。

『こちらエルベ1。指定高度に到達。これより増速しつつ目標へ突撃する。』
『こちら第1教導団オルクス隊所属、パトリオット・フォン・ツェッペリン中佐だ。コールサインはアドラー。攻撃隊、敵機は任せてくれ。全機無事に還ろう。』
我々の少し上空、被さるように飛行にしている第1教導団の1機から通信が入った。
『アドラー、こちらエルベ1。競技会での噂は聴いています。腕前を拝見できるとは光栄です。』
『プリースト2からアドラー。中佐殿、無事に帰れたら部隊全員で一杯ずつ奢らせてもらいますよ。』
マーシャル少佐の返事に続いて、バルクホルン中尉が茶々をいれた。
『各機、作戦行動中だ。私語は慎め。無駄話は命取りだ。』
間髪いれず、AWACSから注意が入る。
どうしてこう、AWACSの乗務員はみな同じように事務的で冷たく低い声なんだろうか。
まぁ、事務的でなければ、前線で航空管制などできないのだろうが。
小声で悪態をつくバルクホルン中尉に苦笑している間にも、編隊は着実に目標の船団に接近していた。

そして、戦いの場に立ったことを告げる通信が入る。
『ツューゲルより各機へ。・・・正面、高度9,600にボギー。数は20・・・・・・距離80マイル。ネーヴェル隊、シュピース隊、武器の使用を許可。敵編隊の接近を阻止せよ。』
『こちらネーヴェル1、各機はドロップタンクをパージ。高度15,000まで上昇し、相手の頭を押える。』
『シュピース1、各機ドロップタンクをパージしろ。40マイルで正面から歓迎といこう。』
各隊長の命令と同時に、高々度で警戒に当たっていた飛行隊が8本の白い飛行機雲を引きながらぐんぐん先行していく。

午後1時44分
『こちらネーヴェル1。敵編隊の頭を取った。これより戦闘を開始する。・・・・・・3、2、1、発射!!』
命令から4分後、リザ大尉の澄んだ声が耳に響いた。
そう、それが我々の戦いを幕開ける号令となった。

ステルス性を最大限に活かし、敵編隊の上空にたどり着いたネーヴェル隊は太陽を背にセオリーどおりの攻撃を開始、4機の翼下より一斉にAAMが放たれる。
蒼い空に伸びていく白い線が、オーシア機に次々と突き刺さり爆発、四散させる。
突然の出来事に僅かに統率を失った敵編隊に対し、今度はシュピース隊からのXLAAMが襲い掛かる。
2機3機と回避が遅れたオーシア機が直撃を受け、あるものは猛炎を噴出しながら錐揉みに入り、あるものは爆発、四散した。
この時点で、もう、収拾のつかない大混乱に敵編隊は陥っていた。
つい数分前まで、緊密な編隊で飛んでいた20機のうち半数近くが一瞬で撃墜されたのだ。
この状況で冷静さを保っている方が不思議というものだ。
そこでネーヴェル隊がダイブの勢いを活かして突っ込んだ。
シュピース隊もそれに加わり、たちまち乱戦となる。
互いの無線が混線し合い、ミサイルの白煙と機銃の曳光弾、そして不運にも被弾し散華したことを示す爆炎が雲を染め、穏やかに晴れていた空は一瞬にして命の交錯する空戦域となった。

そんな中、我々は目標を射程に捕らえるまで、もう数分というところまで進んでいた。
引っ切り無しに敵・味方の声が耳に入る。
(ウェル、無事でいろよ・・・)
そんな心配をする時間を与えてくれるほど、その日の空は優しくはなかった。
AWACSから再びコール。
『ツューゲルよりオルクス隊へ。新たな敵編隊が接近中。数はおよそ8、距離50マイル。』
『こちらアドラー、各機はドロップタンクをパージ、迎撃戦闘に移行。距離40マイルで銛を放つ。』
間髪いれずパトリオット中佐が列機に指示をとばす。
上空のF−22Aがドロップタンクを一斉に投下させつつ、パッと散開。
そこからアフターバーナーを点火し、急上昇を掛けて敵を待ち受ける。
私もレーダーに目を向けた。
きた!40マイル程度前方から、高速でこちらへ向かって接近してくる光点が表示されている。
ブリップが重なっているところを見ると、数は8機以上だろうか。
「オルクス隊、まずは相手の足を止める。アドラーFox 3!」
発射宣言に続いて、パトリオット機と見られる機体からXLAAMが放たれる。
それを合図にオルクス隊の各機もそれぞれがXLAAMを発射する。
ミサイルを示す光点が、凄まじい速さで敵を示す赤いマーカーに接近する。
そして、それが重なった。
命中。
狙われた何機はチャフと敏捷な機動で1発目のXLAAM回避してみせたが、不運な機が直撃を受け、機体の半分を吹き飛ばされて炎に包まれる。
かろうじて直撃を免れた機も高性能爆薬が詰まった弾頭がすぐ脇を通り過ぎる瞬間に炸裂。無数に飛び散る破片で機体を切り裂かれコントロールを失う。
「アドラー。スプラッシュ!!」
パトリオット機から撃墜を伝える通信が入る。
−空軍士官学校主席卒、各競技会での好成績に加え、各紛争での活躍により異例の昇進を遂げ第1教導団に転属−
この経歴に納得する見事な射撃術だ。

残る敵編隊は散開しつつも接近を続けている。
距離が詰まれば混戦となり、数の不利は拭えない。
距離30マイル。
『アドラー、Fox 3 !』
再びパトリオット機から『銛』が放たれる。
オルクス隊の各機も2機単位で突っ込んでくる敵機にXLAAMを発射する。
各機から放たれた『銛』は、またも数機をレーダー上より消滅させた。
『こちらアドラー。スプラッシュ。』
しかし、捕捉された敵のうち2機はアフターバーナー全開で降下、海面スレスレで引き起こして高G旋回に入った。XLAAMは旋回に追尾しきれずそのまま海面に激突、大きな水柱を立てる。
『こちらオルクス4。外れた!!あのオーシア野郎はいい腕だ。』
『オルクス4、その2機の頭を押さえておけ。各機自由戦闘!攻撃隊には1機も近づけるな!』
パトリオット中佐の指示に従い、4機のF−22Aは各個に戦闘を開始。
F−22Aの性能と、教導団の技量をもってすれば1騎討ちなら必ず勝てる。1対2でも互角の戦いはできる。
そう判断しての命令だった。

午後1時49分
自機のレーダーに無数の光点が映し出される。
航空機とは違い、ほとんど動いているように思えないほどの速度で移動している。
間違いない、目標の船団だ。
縦列に組まれた集団が2つ、円陣組んだように見えるものが3つ。
IFFが味方と識別するものが、縦列を組んだものに右から左から接近しているのをみると、これが戦闘艦艇だろう。
『こちらエルベ1、手前の船団に予定通り一斉射をかける。ASM発射用意!!』
ようやく我々に出番が回ってきた。
レーダーで捉えた光点、大きさから見て駆逐艦クラスか。
ASMを選択、同時に船団の先頭にいる艦にレーダーロック。
『プリースト4よりエルベ1機へ。先頭の艦をロックオン。いつでもいけます!!』
続いて、僚機が次々と目標をロックオンした旨を報告し、F−2隊の攻撃準備は整った。
『攻撃隊一斉射!!ファイア!!』
『了解、FOX3!FOX3!!』
それぞれが発射宣言の後、我々の機体から放たれたASMが盛大な排気煙をあげながら15本まっすぐ伸びていく。発射されたASMは、しばらく直進したのち、高度を下げ海面スレスレに舞い降りて、それぞれの目標へ突進していく。

しかし、すでに対空戦闘を開始していたオーシア第6艦隊の対応は素早かった。
まず、旗艦であるイージス艦<ウィルソン・フラッグ>が新たなミサイル群を感知、イージスシステムはすさまじい速さで目標の脅威判定と迎撃設定を行い、それを全艦に伝送、直ちにSAMの速射が秒単位で開始された。
38発のSAMが各艦から放たれるまでに、ものの2分とかからなかった。
SAM発射から約1分後、互いのミサイルが衝突をはじめ無数の小爆発が連続して発生した。

一瞬眩い輝き後、遠くの洋上に無数の爆炎が花開く。
それはまるで芸術のようで儚く美しい光景だった。
私は、思わずその輝きが生きとし生ける者に死を与えるものであることを忘れ見入ってしまった。
それは、ある種の戦場心理というものかもしれない。
『エルベ1より攻撃隊各機へ。そう易々と終わらせてはくれないらしい。当初の予定通り、小隊ごとに自由戦闘開始!』
『プリースト3、自由戦闘に移行する。いくぞ、ラインダース、ついて来い!!』
ハンス中尉の声で我に返った私は、彼に追従するために操縦桿を倒した。
紺碧の空記事全文TB:0CM:1
コメント
拝見
どうも、来週が終わるまでは携帯で拝見するしかないサンダーです
すでに暫定公開から半月、本来の公開からは1ヶ月が経ってしまった私からは、更新が出来る方が羨ましく思えます

分の内容は、十分なほどあると思いますので、これからの展開に期待しています
サンダー #GxlL9hY2|2007/11/17(土) 16:36 [ 編集 ]
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