<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?><rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#" xmlns="http://purl.org/rss/1.0/" 
			xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/" xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/" 
			xmlns:cc="http://web.resource.org/cc/" xml:lang="ja">
<channel rdf:about="http://ac1995.blog120.fc2.com/?xml">
<title>紺碧の空</title>
<link>http://ac1995.blog120.fc2.com/</link>
<description>ACE COMBATでのユーザー間の交流を深める事を目的としています。 当ブログに掲載されている物に関しましては、全て私viperに著作権があります。</description>
<dc:language>ja</dc:language>
<items>
<rdf:Seq>
<rdf:li rdf:resource="http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-46.html" />
<rdf:li rdf:resource="http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-45.html" />
</rdf:Seq>
</items>
</channel>
<item rdf:about="http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-46.html">
<link>http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-46.html</link>
<title>紺碧の空～選びし道～</title>
<description> 1995年5月27日　午前11時08分　ノルトベルカ　ヴェストファーレン航空基地ヴェストファーレン航空基地へ最後に着陸を果たしたガーランド少佐は、滑走路脇に行方が分からなくなっていたユーゲントたちの顔を認めて、ようやく安堵の表情を作った。だが、そのいずれもが火器管制装置の入れ忘れを故障と勘違いしたり、対空砲火に驚いて離脱したなど、聞いていて頭が痛くなるような内容であり、安堵感を遥かに凌ぐ落胆に打ちのめされる
 </description>
<content:encoded>
<![CDATA[ 1995年5月27日　午前11時08分　ノルトベルカ　ヴェストファーレン航空基地<br /><br />ヴェストファーレン航空基地へ最後に着陸を果たしたガーランド少佐は、滑走路脇に行方が分からなくなっていたユーゲントたちの顔を認めて、ようやく安堵の表情を作った。<br />だが、そのいずれもが火器管制装置の入れ忘れを故障と勘違いしたり、対空砲火に驚いて離脱したなど、聞いていて頭が痛くなるような内容であり、安堵感を遥かに凌ぐ落胆に打ちのめされることとなった。<br />この無様な結果の根本的な原因は、やはり訓練と経験の決定的な不足が挙げられる。<br />戦闘の経過は、無線の遣り取りを通じ、すでに基地内に知れ渡っているようだった。<br />連合軍地上部隊と交戦してこれを撃退。<br />だが、敵の主力と思われる機甲師団の大部分を取り逃がし、アイフェルの守備隊が被害を受け無視できない死傷者が出た。<br />陣地を突破されなかったのは、ただ運が良かっただけだろう。<br />さらには、戦闘中に無断で脱落したユーゲントが3名。<br />未熟なパイロットを用いて作戦を実行するが、どれほど無謀なことか、開戦から生き残ってきたパイロットたちの心は重くなるばかりだった。<br />「何しに行ったのかねえ……連中」<br />「これじゃ先が思いやられるぜ。」<br />基地内のぼやきを他所に、基地に降り立った残りの6機はゆっくりと格納庫へ移動を始めていた。<br />その動きに精彩さはなく、まるで戦に破れ疲れ果てた愛馬と共に国へ帰る騎士のようだった。<br />「アハトゥンク！」<br />ヴェストファーレン基地の巨大な地下格納庫―――<br />そこで、首をうなだれて立つユーゲントたちをバルクホルン中尉が充血した眼で睨み付けた。<br />「お前ら、今日のザマは何だ！？」<br />ぐっと口を結ぶ者。<br />ますます頭を垂れる者。<br />反応はそれぞれだったが、抱いている心情はほとんど同じなのだろう。<br />「敵を見て騒ぐだけなら、その辺の子供でもできる。お前たちの任務は違うだろうが！敵を取り逃がすぐらいはまだいい。だが、編隊行動だけは絶対に崩すな！　単機で戦闘を行うのはお前たちじゃ無理だ！　それと、ホルストッ！！」<br />「はい。」<br />空中集合した時の視線から、叱責があることをうすうす感づいていた私は背を正した。<br />「なぜ編隊から離れて独断で攻撃を行った？」<br />「敵の発砲及び友軍陣地内への突撃を確認したためでありますっ。」<br />ゆっくりと私に近づきながら、バルクホルン中尉が問いかけてくる。<br />その声は抑揚がなく、かえって気味が悪い。<br />「隊長の指示になぜ従わなかった。」<br />「敵の侵入を防ぐことが最優先事項だと判断したためであります。」<br />私の前に立つと、ジッと目を見たまま中尉が言葉を継ぐ。<br />その声色は、訊ねているというよりも、爆発しそうな感情を抑えているようにも感じる。<br />いや、きっとそうだろう。<br />「編隊長はお前か？」<br />「違います！」<br />「では勝手なまねをするな！　今後、命令なしに動くことは許さん！」<br />突き出された指が、私の胸を強く押し付ける。<br />普段陽気な中尉の表情が、険しさを増していた。<br />「分かりましたっ！」<br />「では、総員解散。2時間後に再び待機室に集合して反省会を行う。以上だ。」<br />ユーゲントたちと同じように更衣室へ向かおうとした私を、中尉は呼び止めた。<br />「ホルストは、俺と一緒に来い。」<br />ふと、見上げるとキャットウォークに佇む人間と目があった。<br />制帽から覗く瞳が、見下ろす対象を鋭く射抜くように見ている。<br />階級章は見えないが、服装から高級士官だとすぐに判った。<br />慌てて歩みを止め、姿勢を正して挙手の敬礼をする。<br />見下ろしていた浅黒い肌の男は制帽のひさしに軽く手をあてて答礼すると、ゆっくりと歩き去っていった。<br />取ってつけたようでありながらも、年季の入った敬礼だと感じる。<br />私は、遠ざかっていく背中をしばらく見つめ続けていた。<br /><br />1995年5月27日　午前11時50分　ヴェストファーレン航空基地<br /><br />「予想はしてたとはいえ…お前らがいながら何てザマだ。」<br />飛行隊の隊長室。<br />第4航空師団の飛行隊長であり、私が所属する34戦闘飛行隊の隊長でもあるガーランド少佐は大きく溜息をつき、手に持ったマグカップの中身に視線を落とした。<br />私にとって奇異だったのは、ガーランド隊長と同席しているのが、南部方面軍参謀クラウス・フォン・シュタウフェンベルク少佐だったことだ。<br />丁寧に後ろへ撫で付けられた金髪。<br />堅苦しい第1種軍装などではなく、スーツにシルクハットでも被れば絵に描いたような紳士が出来上がるだろう。<br />人の良さそうな笑顔は彼の穏やかな性格を感じさせるが、その身体から発せられる雰囲気は若くして参謀職に抜擢された才を伺わせた。<br />「ホルスト。」<br />ソファーに腰を沈めたまま、ガーランドは上目遣いで私を見つめる。<br />「だいぶ暴れたな？」<br />その眼光に、思わず私は背を正して口を開いた。<br />「いえ、主要目標の機甲部隊は、敵戦車3両撃破のみでありますっ。」<br />クラウス少佐が感嘆の息を漏らした。<br />「さすがガーランドの部下だな。若いのに大したもんだ。」<br />「味方の混乱を代償にした戦果だ。褒められたもんじゃねえよ。」<br />クラウス少佐の言葉を、一刀のもとに切り捨てたガーランド少佐の目は笑っていない。<br />返答に窮した私を不憫に思ったのか、バルクホルン中尉が助け舟を出した。<br />「ホルスト、言いたいことがあれば言ってみろ。」<br />その言葉を受け、私は無言で頷くと口を開いた。<br />「敵が陣地内に侵入するまで時間がありませんでした。あの場合は爆撃を続行すべきだと思います。先手必勝は、戦闘の鉄則だと思いますが…。」<br />上官であり、先輩パイロットでもある2人を前にして、我ながら勇気のある発言だと思った。<br />しかし、これは今後にとって必要なことなのだ。<br />攻撃が遅れたために、あるいは編隊の誘導が悪いために収拾が付かないのであれば、まだマシだ。<br />最悪の場合、編隊の壊滅を招く。<br />そんな経験を、私を含め目の前の2人は経験してきているはずだ。<br />「思い上がるな、ホルストッ！」<br />ガーランド少佐が、眼を剥いた。<br />「戦闘は、個人競技じゃない。お前がやるべきことは、自分が得た情報を正確に伝え続けることだ。勝手に突っ込んでおっぱじめることじゃない。戦争をやっているのは、お前1人じゃないってことを忘れるな。」<br />「しかし、隊長……」<br />「お前のやった行動を、子供たちが真似をしたらどうなる？それこそ目も当てられない事態が起こるだろうが。」<br />ガーランド少佐はカップを机に置き、胸ポケットからタバコを取り出しながら言った。<br />「ユーゲントのパイロットたちは、例えるなら乾いたスポンジと同じだ。良いことも、悪いことも全部吸収していってしまう。そこを頭に入れておけ。長機として、それができないのであれば…隊から外れてもらう。」<br />私は無言のまま俯いた。<br />隊長の言うことは正論であり、そして絶対だった。<br /><br />私の表情の変化を見たのだろうか、ガーランド少佐は急に話題を転じた。<br />「……で、どうだった。ジャーヘッドの感触は？」<br />「ジャーヘッド？」<br />何のことか分からず、私は怪訝な表情を浮かべた。<br />「オーシアのマリーン・コー（海兵隊）のことだよ。ボケっとすんな、大事なことだろが。」<br />ガーランド少佐の眼が、いつの間にか笑っていた。<br />それが、私が知っているいつものガーランド隊長だった。<br />「強いですね。今回、エアカバーがついていなかったのは運が良かったと思います。上空の援護があったとしたら、支援どころではありませんでした。」<br />「向こうも学習したことだろうし、今後は、そうはいかないだろうな。」<br />ガーランドはわずかに口の端を歪めて笑った。<br />私は表情を変えないまま、言葉を続ける。<br />「ユーゲントたちが、夜間の地形追従飛行を習得しない限り、今後目標までの接近は極めて困難だと思います。それと、対地ミサイルのような誘導兵器は、彼らには荷が重過ぎるかと。」<br />「連中に戦果なぞ期待してはないが…夜に低空飛行なんかやったら、事故が続出だろうな。」<br />バルクホルン中尉が、結果は見えているとばかりに溜息混じりの声で言葉を挟んでくる。<br />「制空権が不安定な現状において、敵の陸上部隊を攻撃するのは非常に困難と言わざると得ません。うちの部隊で少しでも戦果を挙げるなら、敵戦闘機の少ない夜間に単独…もしくは少数機で銃爆撃を行うことが最良と思いますが……」<br />話しながら自然と語尾が下がった。<br />作戦立案のプロであるクラウス少佐を前に、一介のパイロットである自分が浪々と戦術論を述べるのがおこがましいことに気がついたのだ。<br />「なるほど、そのための夜間低空侵攻か。」<br />ガーランドは半ば独り言のように頷きながら言う。<br />「確かに、連中も今日で懲りただろうからな。今後は、白昼堂々と強襲なんぞ許しちゃくれんだろう。訓練の内容次第ではモノになるかもしれん。」<br />生意気な発言に、再び叱責を受けることを覚悟していた私は、その反応にとりあえずホッとした。<br />「…驚いたな。少尉、君は若いのに参謀本部要員になるだけの素質と技量を持っている。フライトスーツを脱いだら、すぐに制服を着て仕事ができそうだ。」<br />クラウス少佐が、感嘆する。<br />「そうだな、本人が希望するならそっちへ推薦してもいいぜ。こいつは。」<br />ガーランド少佐が笑いながら言った。<br />そこまで褒められると、私としても背中がむず痒い。<br />「……だが、すぐに天狗になるところが玉にキズだがな。」<br />期せずして上がった笑い声に、私は赤面するしかなかった。<br />「ホルスト、念のために聞いておくが、あの時、我々の任務は何だった？」<br />ガーランド少佐が、しばらくマグカップの中身を見つめた後、深みのある声で訊いた。<br />「それは……友軍陣地を守ることであります。」<br />僅かに考えた後、私はきっぱりと答えた。<br />その答えを聞くと、ガーランドは満足そうに頷く。<br />「実を言えば、俺はあの時ユーゲントたちの安全を確保することしか頭になかった。そこは反省すべきことだと思う。」<br />ガーランド少佐が難しい顔をして呟いた。<br />「守るというのは、難しいですね。」<br />私も、素直に思ったことを口にする。<br />「ああ、まったくだ。今頃になって、アイスホッケーのディフェンスの気持ちが良く分かるよ。」<br />「隊長はアカデミーのアイスホッケーチームでは名選手で通っていたそうですが。」<br />ガーランド少佐の発言に、バルクホルン中尉が視線を転じながら口を挟む。<br />「名選手どころか、こいつ、あの頃はペナルティのガーランドって呼ばれてたよ。」<br />クラウス少佐が、そう言って大声で笑った。<br />「参謀殿は、アカデミーで隊長と同期だったんだ。」<br />怪訝な顔をした私に、バルクホルン中尉が小声で教えてくれた。<br />「クラウスは、100年に一度の天才と呼ばれていたんだ。もっとも、一番大事な操縦の腕はからっきしで、座学での話だが……。」<br />ガーランド少佐がニヤニヤと笑いながら言う。<br />その顔は、まるでいたずら好きの児童のようだ。<br />「うるさいっ……誰のおかげで卒業考査をクリアできたと思ってるんだ。」<br />クラウス少佐が怒鳴り返す。<br />カップの中のコーヒーも、戦闘の総括もそっちのけで始まった奇妙なやり取りに、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。<br /><br />1995年5月27日　午後0時30分　ヴェストファーレン航空基地　地下格納庫<br /><br />その後、訓練内容の具体的な内容に話題は移っていった。<br />ガーランド少佐の基本的な考えはこうだった。<br />夜襲部隊として、敵陸上部隊や地上施設への銃爆撃を行うのだから、夜間航法訓練と低空侵攻訓練に力を入れる。<br />飛行休止や雨天の場合は、ユーゲントたちを集めてシュミレーターによる訓練はもちろんのこと、航法や通信、夜間の地上施設などの見え方、攻撃方法などの戦術、飛行機の構造に至るまで嫌というほど講義を行う。<br />手探りながら、今日の午後から実施に入ろうということで、話はまとまった。<br /><br />雑談から開放されると、私は再び格納庫へと足を向けた。<br />機体の状態を自分なりに点検しようと、ふと思い立ったのだった。<br />キャットウォークから見下ろした格納庫の片隅に、自分のストライクイーグルが佇んでいるのが見える。<br />安堵にも似た気持ちを抱きながら、軽い足取りで階段を下りていく。<br />最後の段から足を離したところで、整備を受けるグリペンの隅に立ち並ぶ人影に気付いて私は歩みを止めた。<br />「…………。」<br />ベルカン・ユーゲントたちだった。<br />フライトスーツを脱ぎ、ラフな作業服へ着替えたユーゲントたちの顔を改めて見た私は目を見張った。<br />どの顔も、ひどく幼い―――<br />最も年長と思われる兵士でも、20歳に届いているようには見えない。<br />平均して、17～8歳だろうか。<br />中には、頬を真っ赤にした15歳ほどの少年もいた。<br />はっきり言って、軍服より学生服の方が似合う顔つきだ。<br />その彼らが、私を認めるや否や姿勢を正す。<br />『敬礼っ！』<br />最年長と思われる少年の号令に、ユーゲントたちは一斉に敬礼をする。<br />私も仕方なく答礼を返した。<br />『……何をしている？』<br />そう私は口にした後、感情的な言葉遣いだったかなと思わなくもなかった。<br />初陣であったとはいえ、戦力とはなり得ない実力の彼らを、私はまだ戦友だと認めていない。<br />そのことに触れるつもりはなかったが、口にしないことが、かえってさっきの語気にあらわれた気もする。<br />「あの……少尉殿」<br />1人の少女が姿勢を正し、恐る恐る口を開いた。<br />「…ん、なんだ？」<br />先ほどの語気もあり気まずかった私は、わざとポケットに手を突っ込みくだけた姿勢になる。<br />「先ほどは足手まといになってしまい、申し訳ありませんでした。」<br />そう言うと少女は黙り、他の者は視線を落とした。<br />「……いや、君たちの任務は敵地上部隊の掃討だ。任務外の空中戦に巻き込んでしまって悪かったな。」<br />沈黙が支配する沈んだ雰囲気を和らげるように、私はにっこりと、わざとらしいくらいの笑顔を浮かべた。<br />「……はい。」<br />だが、ユーゲントたちの表情は硬いままだった。<br />「とにかく、午前中のことは忘れて気持ちを切り替えてくれ。それより君たちの名前を聞いていなかったな。」<br />私は、ユーゲントたちの自己紹介を提唱すると、それに先立って自分の名前を名乗った。<br />黙って直立したままのユーゲントたちだったが、右端の少年がすぐにトゥーレ・イリルッシ特務准尉と名乗った。<br />「せっかくの自己紹介だ。イヤでなければ、出身地も教えてくれないか。」<br />私はそう言いながら、近くの工具箱に腰を下ろす。<br />「ティノ・ルーツィア特務准尉、17歳。出身はホフヌングであります。」<br />ティノと名乗った少年が真顔で答えると、最初に口を開いた少女が直立の姿勢を取った。<br />「ヴァネッサ・インゲブルク特務准尉。南ベルカの港町、アウクスブルクの出身であります。」<br />少女の言葉を聴いて、私は目を見開いた。<br />「アウクスブルクだと？」<br />「はいっ。」<br />ヴァネッサ特務准尉が、なぜ怪訝な顔をして返事をする。<br />「奇遇だな。俺もアウクスブルクの出身だ。…准尉、君は、いくつになる？」<br />「18歳であります。」<br />ヴァネッサは堅苦しい表情を浮かべ、真っ直ぐに私を見返した。<br />「18歳…学校は？」<br />「はい、この4月よりアウクスブルク大学の数学・コンピューターサイエンス部に籍をおいております。」<br />それでは、亡くなった妹と同い年ではないか。<br />改めて彼らの顔を見渡しながら、私は口を開いた。<br />「……それで、グリペンの飛行時間は？」<br />「80時間であります。」<br />「たったそれだけの訓練で………」<br />「はい。少尉殿がお考えとおり、我々の腕は極めて未熟であります。ですが、志願した以上やってみせます！！」<br />「…やってみせるだと？」<br />唖然として問い返す私に、若い少女は頷いてはっきりと答えた。<br />「家族や友人たちが1日でも平和に暮らせるならば、たとえ微力であろうと私たちは戦わなければならないと考えております。」<br />彼女たちの気持ちも分からないではない。<br />だが、美しくも勇ましい気持ちだけでは戦争はできないのだ。<br />私は工具箱から腰を上げ、彼女の正面に立つ。<br />「ヴァネッサ特務准尉。我々に与えられた任務は非常に過酷だ。……君はその年で死にたいのか？」<br />「覚悟の上です。敵と刺し違えてでも、作戦の目的を達成してみせます。」<br />そう問いかけた私の目を見据えたまま、ヴァネッサ特務准尉は即答する。<br />その言葉に、私の感情が弾けた。<br />「覚悟だと！？刺し違えるだと！？今のお前らが束になってかかっても、目標にたどり着く前に1機残らず撃ち落されて全滅だ！偉そうな台詞は、一人前になってから吐け！」<br />力任せに襟首を掴み上げ、大声で怒鳴った私に、少女の顔は見る間に蒼白となっていった。<br />全く、狂ってきてる。<br />このベルカ公国は、どこで進むべき道を間違え狂気に支配された国となったのだろう。<br />（いや―――。狂っているのは国だけじゃない…な。）<br />まだ年端も行かない若者を志願させ、わずか80時間ばかり訓練しただけで、最前線へ送り込んでくる。<br />彼らの志は、一様にひたむきで一途だった。<br />自己の命を犠牲にしてでも、この国を、ベルカを守りたいという決意が痛いほど感じられる。<br />だからこそ、未熟な技量の彼らと飛ぶわけにはいかなかった。<br />彼らが死んで喜ぶのは敵だけだ。<br />彼らには、これからのベルカを支えていく貴重な役割がある。<br />その役割がある以上、決して命を粗末にして欲しくはなかった。<br />（どいつもこいつも狂わされている…。俺もそのうちの一人だ…）<br />襟首を掴んだまま、ヴァネッサ特務准尉を睨み付けている私に、ティノ・ルーツィア特務准尉が恐る恐る声をかけてきた。<br />「少尉殿は開戦以来のベテランパイロットと伺っております。………私たちに戦い方を教えてください。お願いします。」<br />そして、深々と頭を下げる。<br />傍らに立つ少年たちも彼に続いて頭を下げた。<br />「ベテランなんて聞こえの良いもんじゃない。ただ、運が良かっただけだ。」<br />私は、ヴァネッサの襟首から手を離すと、その手をズボンのポケット入れながら少年たちに向き直る。<br />「…直接俺が教えなくても、今日の午後から講義や実習が始まる。教官の一挙手一投足を見逃すな。それが上達への一番の近道だ。…分かったか？」<br />「は……はいっ！！」<br />「食事を摂って、連絡があるまで待機所で身体を休めていろ。それも任務の内だ。」<br />そう言うと、私は彼らに背を向けて歩き出した。<br />「…敬礼はいい。」<br />ユーゲントたちが姿勢を正すのを感じ、背を向けたまま押しとどめると、歩を進める。<br />なぜだか分からないが、無性に悔しかった。<br /><br />1995年5月27日　午後9時00分　ベルカ公国　ヴェストファーレン航空基地　隊員宿舎<br /><br />「今日の講義はここまでだ。明日は、午前8時から訓練を開始する。以上…解散。」<br />「ヤヴォール！」<br />ガタガタと椅子から立ち上がり、疲労困憊といった様子のユーゲントたちを横目で見送って、私は大きく息をついた。<br />教官を務めていたパイロットが、電灯のスイッチを切り始めたのに合わせて講義室を出る。<br />昼過ぎから開始された教練は、夕食をはさんでたっぷり6時間行われた後、ようやく終わりを告げた。<br />教える側の我々にも、ようやく自由な時間が訪れる。<br />自由とは言っても、ベッドに倒れ込むまでに、まだやらなければいけないことがある。<br />着替えに、入浴、報告書の作成。<br />それらを全て無視して眠り込んでしまいたい衝動を必死に抑えながら、綿のようになった身体を引きずって、私は自室へたどり着いた。<br />ベッド脇に置いたままのボストンバッグを開いて着替えを取り出す。<br />今にも床に崩れ落ちそうな自分を叱咤しつつシャワールームまで歩き、備え付けの長椅子に座り込む。<br />目まぐるしく1日が過ぎたからだろうか、疲労感はイヤというほど感じるのに、なぜか夢の中のようで現実感に乏しい。<br />（シャワー……浴びなきゃな…）<br />意を決した私は、衣服を脱ぎ捨るとシャワールームに入り、シャワーの蛇口を思いっきりひねってお湯を頭から浴び始めた。<br />「……ふう」<br />少しばかり熱めのお湯が、肌を刺激する。<br />「疲れた…な……」<br />毛穴の一つ一つから何かが抜けていくような感覚に、僕は小さくひとりごちた。<br />ふと意識が遠のき眠りの世界へ行ってしまいそうになるほど、心地良い。<br />老廃物が全部流れ去って、全てが新しいものに入れ替わる。<br />そんな錯覚さえ覚えた。<br />備え付けのシャンプーを取り、頭を洗う。<br />フローラル系の優しい香りが鼻腔をくすぐる。<br />（少数機による夜間攻撃、か……）<br />私は目を閉じたまま、蛇口を捻った。<br />目を閉じ、下を向いていても、浴室の照明が私の視界を僅かに照らしている。<br />耳に届くのは、意味のない、ノイズのような流れる水の音だけ。<br />全てが曖昧になり、世界に自分一人しかいないような、そんな錯覚に陥る。<br />それは奇妙に安心できる行為だった。<br />身体のあちこちに溜まっていた悪い血が循環を再開し、浄化されるためにゆっくりと全身を流れていく。<br />昨日から胸にこびり付いた雑念も、なんとなく血液と一緒に去っていくように思えた。<br />空気を軽く吐き出すと、滴り落ちる滴に雑念も溶け完全に抜け落ちていく。<br />「はあっ…。」<br />胸の中の空気を全て吐ききった私は、勢いよく顔を上げた。<br />髪をかき上げ、絡みついた液体をそぎ落とすようにして背後に流す。<br />それでも流れ落ちてこようとするお湯を、両手で擦るようにして振り払い、小さく頭を振る。<br />四肢に力が戻り、意識がはっきりしてきたように感じた。<br />私は再び大きく息をつくと、身体を洗うためスポンジに手を伸ばした。<br /><br />1995年5月27日　午後9時40分　ベルカ公国　ヴェストファーレン航空基地　隊員宿舎<br /><br />「それにしても、窓がないのは気味悪いな……」<br />シャワーのおかげでさっぱりした私は、宿舎の廊下を歩きながら呟いた。<br />地下通路なので窓がないのは当たり前なのだが、無機質に伸びる通路には言い知れぬ重苦しさを感じる。<br />打設したコンクリートがむき出しのままの内壁、薄暗く灯る蛍光灯、自分の靴が立てるコツコツという乾いた足音。<br />地上との隔絶に伴う心理的圧迫感―――景色を眺めることや風を心地よく感じれることが、これほど素晴らしいものとは思わなかった。<br />部屋にしても、備え付けの家具といえばスチールパイプ製の椅子と、ベニヤ板製の天板がついた机、それに小さなロッカーぐらいだろうか。<br />最小限の設備で経費を削減する実に合理的な部屋と言えばそれまでだが、密閉された空間での生活はどうも落ち着かなかった。<br />「こんなとこに長く居ると、おかしくなりそうだな。」<br />そう口にして、私は口許を皮肉っぽく歪ませた。<br />毎日のように連合軍と交戦し、さらには子供を実戦投入する手助けをしている。<br />もう十分普通じゃない。<br />いつの間にか、敵を撃ち落すこと、相手を殺すことに何のためらいもなくなっている自分がいる。<br />昨年までの自分なら、それを決して普通とは言わないだろう。<br />(…だいぶ参ってるのかな………こんなことを考えるなんて。)<br />そう自分自身に語りかけ、乾きかけた髪に手をやったその時、自室の前に誰か居ることに気がついた。<br />薄暗い灯りに照らされ、僅かに人の輪郭を浮かび上がらせていた黒い影は、近づくにつれ、バルクホルン中尉とガーランド少佐の形となって現れた。<br />「よぉ、ホルスト。」<br />ラフなスウェット姿に着替えたガーランド少佐が微笑む。<br />「なんだ、風呂だったのか。呼んでも出てこないから寝てるのかと思ったぞ。」<br />「ブリーティングですか？」<br />私は、2人がいる理由が分からず怪訝そうな表情を浮かべ尋ねた。<br />「そんなものは糞食らえだ。ビールだよ、ビール。ホルストの記念すべき新基地初夜だ、赴任のお祝いをせにゃならん。」<br />バルクホルン中尉が肩を叩いて私を促す。<br />その息からは微かにアルコールの臭いがする。<br />私がシャワーに行っている間に酒盛りが始まっていたらしい。<br />「少佐、いいんですか？邀撃命令でも出たら大変ですよ…。」<br />洗濯物を室内に放り投げた私は、扉を閉めながらガーランドをちらりと見て言った。<br />「言っただろ、そんなものは糞食らえだ。固いこと言わないで、たまには寝酒代わりに付き合え。」<br />そういうと、ガーランド少佐は先頭にたって歩き出す。<br />その後ろをにやりと笑ってバルクホルン中尉が続いた。<br />睡眠に対する未練が消えたわけではない。<br />だが、風呂上りの一杯という誘惑は、それを遥かに上回っていた。<br />私は自室のドアに一瞥をくれ、それから中尉の後を追って歩き出した。<br /><br />広い部屋に長テーブルとパイプ椅子が並べられた、食堂には、10人ほどのパイロットが談笑していた。<br />ガーランド少佐やバルクホルン中尉に続いて私が入って行くと、男たちは飲み物を片手に我々を囲み、歓声を上げる。<br />「誰かビールをくれ。」<br />ガーランドが怒鳴った。<br />何人かのパイロットが、弾かれたように飲み物を取りに走って行く。<br />ほどなく、彼らは腕一杯にガッフェル・ケルシュの瓶を抱えて戻って来た。<br />それぞれの手にビールが行き渡ると、ささやかな乾杯が交わされる。<br />乾杯の声と共に瓶を差し上げた私は、一気にビールを流し込んだ。<br />炭酸が喉を刺激し、ほんのりとリンゴのような風味を持つキレのある液体が食道をすべり落ちていく。<br />330ｍｌ入りのビールは一息で空になった。<br />すぐに手近な瓶を手に取り栓を開ける。<br />髭についた泡を拭ったバルクホルン中尉が、身を乗り出して話し始めた。<br />「なぁ、ホルスト―――」<br />私が顔を向けると、バルクホルン中尉はビールをぐっと飲み干して続ける。<br />「酒がまわる前に、お前に聞きたいことがあってな。………お前、何があった？」<br />「何が……ですか？」<br />突然の問いかけに思わず私は聞き返した。<br />ガーランド少佐が短いため息をつきながら言葉を継いだ。<br />「離陸前からおかしかった。何か思いつめた顔して。それに朝の行動……お前らしくない。」<br />「あれは………頭に血が上ってしまって…」<br />歯切れも悪く答えるものの、黙って視線を投げかけてくる少佐たちの目を見ると、心の中を容易に見通されている気分になった。<br />ポケットからタバコを取り出して咥える。<br />側に座っていたロベルト准尉がライターを鳴らして火を点けてくれた。<br />どうしようかとしばらく悩んだが、意を決して私は言葉を切り出した。<br />「……休暇中に連合軍機の空襲に遭いました…」<br />口ごもった私の表情を見て、ロベルト准尉が思わず口を挟んだ。<br />「まさか…ご家族の身になにか…」<br />「妹が逃げ遅れ……機銃掃射に晒されて…」<br />一同が、しんと静まり返った。<br />込み上げてくる悲しみと後悔。<br />「……目の前で……即死でした。」<br />押し殺した呻きが、口から洩れ、握りしめた拳の上に水滴がポタポタと落ちる。<br />昨日から堪えていた気持ちが、堰を切ったように溢れ出し、悲しみの濁流となって一気に流れていく。<br />「助けることも、敵を退けることも……何もできませんでした…。」<br />ロベルトが、唇を噛み締めて俯く。<br />テオドール中尉は目を閉じて、ゆっくりと頭を振った。<br />しばらく、沈黙が流れる。<br />打ちっぱなしのコンクリートの壁が、なおさらに静寂をかき立てた。<br />「……そうか、そんなことが…」<br />バルクホルン中尉が、しんみりとした口調で言う。<br />沈黙に耐えられなかったのだろう、テオドール中尉がビールを乱暴にあおった。<br />肘を付き、まるで祈るように手を組んだガーランド少佐が拳の向こう側で静かに私を見つめる。<br />そして、短いため息の後、ゆっくりと口を開いた。<br />「……なぜ、出撃前に話してくれなかった。」<br />「……………。」<br />私は口をつぐんだままだったが、かまわずガーランド少佐は言葉を続けた。<br />「これから先、戦況はさらに困難になっていく。連合軍との戦力差は少なく見積もっても3倍。我々は、1機で3機分の働きをしなくてはならん。だから、パフォーマンスの低下を招く不安材料は、今ここで全て吐き出してしまえ。そんな話も出来ないほど、我々の信頼関係は薄いものじゃないだろう。口にすることで楽になることもある……違うか？」<br />ふと、顔を上げると、席に着いていた全員の顔が私に向けられていた。<br />その表情は決して哀れみや同情などではなく、親愛の情が浮かんでいる。<br />バルクホルン中尉とテオドール中尉が気取った仕草で瓶を掲げた。<br />ロベルト准尉も照れくさそうに笑う。<br />それに釣られて、私も少し唇を歪めた。<br />その硬かった食堂の空気が、ほんの少しだけほぐれたようだった。<br />「…そうですね。少し、楽になった気がします。」<br />私は、その心情を素直に口にした。<br />「よしっ、今夜はとことんやろう！」<br />バルクホルン中尉が、いきなりテーブルを叩いて言った。<br />理由はどうあれ、飲めることが嬉しくてしょうがないらしい。<br />それを横目にガーランド少佐は組んでいた手を解くと、軽く鼻をならす。<br />そして言ったのは、あっさりとした一言。<br />「明日は、新米どもを迎えにいく。午前7時の離陸に差し障りのない程度に…大いにやれ。」<br /><br />その夜、私は夜の更けるまで痛飲し、したたかに酔った。<br />もうビールの味は分からない。<br />分かるのは、温くなった液体が喉を通過していくことだけだった。<br />食堂にいる誰もが同じような状態だった。<br />浴びるように飲み、近くにいる者に肩を叩いて語りかけ、挙句は肩を組んで大声で歌い始める。<br />喚き声は次第に大きくなり、ついには憲兵が駆けつけて来る騒ぎになったが、私たちは一向に気にかけなかった。<br />これから共に、明日なき戦いを戦わねばならない私たちにとって、今この時だけが確かなひとときだった。<br />私たちは、苦りきった顔の憲兵を追い出し、苦笑してそれを眺めていたブルクハルト中佐やクラウス少佐まで引き込んで、ひたすら飲み、ひたすら笑った。<br />深夜に至り、酒とつまみが尽きると、多くのパイロットたちはその場に転がって、高いびきをかき始めた。<br />私は、ロベルトやバルクホルン中尉を始め、34飛行隊の面々で彼らを抱き起こし、兵舎に引き上げさせると、再びテーブルを囲んだ。<br />「みんな、いい奴ばかりだ。」<br />バルクホルン中尉が、とろんとした目で言った。<br />倉庫から強奪してきたワインを注ぎ、6人はグラスを打ち鳴らした。<br />「えーと、何の乾杯でしたっけ？」<br />「おいおい、ロベルト。」<br />テオドール中尉が笑って言う。<br />「俺たち全員の武運長久を祈って乾杯するべきじゃないのか？」<br />「あ、そりゃそうだ。それじゃ、もう一度。乾杯！」<br />「乾杯！」<br />6つのグラスがカチンと音を立てた。<br />一気に飲み干したロベルトが、太いため息を吐いて頬杖をつくと言った。<br />人のことは言えないが、だいぶ目が据わっている。<br />「隊長……これから、自分たちはどれくらいの頻度で出撃するんですか？」<br />「そうだな深夜か黎明、天候しだいだがほぼ毎日になると思う。ま、戦力を維持できればの話だが。」<br />ガーランド少佐も半分瞼が閉じた顔でポツリと答えた。<br />その口ぶりは自嘲にも似た響きを微かに含んでいる。<br />「数は……？」<br />デオドール中尉が、真っ赤なった顔をゴシゴシとこすりながら問いかける。<br />「4機から6機くらいだろうな……。ゲリラ戦なんてそんなもんだ。」<br />「6機で、どこまでやれますかね？」<br />バルクホルン中尉が手酌で酒を注ぎ、またぐいっと飲み干す。<br />「酒が入ってから言うのは真剣さに欠けるが……部隊として、最初の出撃は明日の夜。ご苦労だが、ハルツ航空基地からユーゲントたちを連れ帰ってからになるそうだ。」<br />「…………。」<br />周囲が押し黙った。<br />その顔に暗いものを漂わせて、少佐は話を続ける。<br />「目標は……マインツ市にあるブルヒヴェーク・シュタディオン競技場とヒルトンホテル。」<br />「競技場にホテル！？　それじゃあ、都市爆撃じゃないですか！？」<br />ロベルトが、眼を剥いた。<br />「連合軍の侵攻開始直後に、マインツ市が非武装宣言をして街を無血開城したのはニュースで知ってるだろう？おかげで人的被害も街の損傷も免れたが、マインツ市は交通の要所だ。あっという間に、連合軍が補給拠点にしちまいやがった。物資集積所として使われている競技場と、補給部隊司令部があるとされるヒルトンホテルを叩くそうだ。利敵行為に対する良い見せしめになると総司令部の連中は言っていたそうだ。」<br />苦々しさと苛立ちをたっぷりにブレンドして、少佐は吐き捨てた。<br />「出撃するのは我々だけですか？」<br />バルクホルン中尉はグラスを弄びながら訊ねた。<br />「出るのは、うちとベオ隊の合計6機。全てストライクイーグルで編成する。」<br />「のっけから大盤振る舞いですね。」<br />テオドール中尉が鼻を鳴らす。<br />「爆撃は精密誘導弾で？」<br />私は身を乗り出して訊ねた。<br />思い出したくはなかったが、昨日の空襲が生々しく頭をよぎる。<br />任務とはいえ、住民を巻き込むことだけはごめんだった。<br />「そうだと思うがな。……明朝にでも確認しておこう。」<br />そう言って、中佐は髪をかき上げた。<br />「とにかくだ……連合軍の狙いは、短期決戦だ。戦いが長引けば連中の足元でも厭戦気分が広がる。それを恐れて、奴らは過剰とも言える戦力で我武者羅にこちらに進軍してきているのが現状だ。そんな相手に正面切って戦いを挑んでも、物量で押し切られるのが目に見えている。だが、連中にもアキレス腱はある。それは弾薬や兵糧補給を担当するトラックや鉄道部隊だ。無抵抗な部隊を一歩的に叩く…決して褒められることじゃない。」<br />少佐は、こみ上げる感情を胸の内に溜め込むかのように、しばらく黙って後に再び口を開いた。<br />「後世の歴史家からは他に取るべき道もあったと言われるやもしれん。だが、我々は軍人だ。命令を守り、現実を分析して最善の作戦を立て、それを着実に実行する。分かりきった事だがこの繰り返ししかない。それが、人間の醜い面をさらけ出し、汚名を着ることになったとしてもだ。」<br />ガーランド少佐の言葉は、我々の心にずしりとのしかかった。<br />量の減ったグラスを両手で包み込むようにしながら、私はその中身に視線を落とした。<br />黒い影となった私が液体に映り込み、ゆらゆらと揺れている。<br />やがて今の会話を忘れようかとする様に二度三度と頭を振った。<br />自分たちの行いは、敵にも味方にも忌み嫌われることだろう。<br />だが―――もはや、それ以外にこの部隊が有効な策を持たないのも事実でもあった。<br />衆寡敵せず、ベルカは急速に追い込まれている。<br />既に連合軍を追い返すなど遠い夢物語になってしまったことを、上層部は未だに理解していないのだろうか。<br />私は唇を噛み締め、もう一度小さく首を振った。 ]]>
</content:encoded>
<dc:subject>紺碧の空</dc:subject>
<dc:date>2009-11-04T12:20:44+09:00</dc:date>
<dc:creator>viper</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
</item>
<item rdf:about="http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-45.html">
<link>http://ac1995.blog120.fc2.com/blog-entry-45.html</link>
<title>紺碧の空～流血へのシナリオ（後編）～</title>
<description> 1995年5月27日　午前9時12分　南ベルカ　アイフェル防衛陣地近郊高度を下げ、地面を舐めるような低空で侵攻を開始して、すでに数分が経過しようとしていた。『少尉、右上方に航空機……』我々の上方を飛び抜けようとする航空機を最初に捉えたのは、後席のロベルト・キルステン准尉だった。『ロベルト、どこだ？』『2時方向…高度差は10,000フィートくらい。反航してきます。』彼が示す方向にジッと目を凝らすこと数秒……、ほんの一瞬キ
 </description>
<content:encoded>
<![CDATA[ 1995年5月27日　午前9時12分　南ベルカ　アイフェル防衛陣地近郊<br /><br />高度を下げ、地面を舐めるような低空で侵攻を開始して、すでに数分が経過しようとしていた。<br />『少尉、右上方に航空機……』<br />我々の上方を飛び抜けようとする航空機を最初に捉えたのは、後席のロベルト・キルステン准尉だった。<br />『ロベルト、どこだ？』<br />『2時方向…高度差は10,000フィートくらい。反航してきます。』<br />彼が示す方向にジッと目を凝らすこと数秒……、ほんの一瞬キラリと光ったものを私は見逃さなかった。<br />それは肉眼で見るにはあまりにも微かで、瞬きをすれば、すぐに見失ってしまいそうな黒点として空間に浮かんでいる。<br />一瞬光ったモノ、それが太陽の光を反射したキャノピーであることを、私は経験から知っていた。<br />『プリースト3より1。2時上方、敵味方識別不明機。』<br />ただでさえ緊張の続く低空飛行中だ。<br />ついてくるのが精一杯のユーゲントたちが動揺しないよう、短く丁寧な言葉で話すよう心がける。<br />『ホルスト、どこだ？　見えないぞ。』<br />私は相手に聞こえない程度に舌打ちした。<br />煌きは、すでに機影となって私の瞳に飛び込んでいる。<br />速度をさらに上げながら向かってくる機体は、もう我々の真上に入ろうとしていた。<br />鋭く尖った機首に太いボディ。<br />直線的な形で作られた大きな主翼と、機体後部に設けられた2基の排気口。<br />日頃から、識別表や講習でベルカ軍が保有する機体は頭に叩き込んである。<br />頭上を通過していく機体がF-4＜ファントムⅡ＞であることは間違いがない。<br />だが、その機体はベルカ軍で使われているファントムとはどことなく違うような印象を受ける。<br />使い古した衣類ではなく、パリッと糊の利いたシャツのような…外見は見慣れた姿でも、中身はまるで違うぞというような感じがしたのだ。<br />もしかしたら、それは機体ではなく乗り手が与える気迫なのかもしれない。<br />『Ｇ型……いや、偵察型？』<br />首を捻り、食い入るように不明機を見上げているロベルトの独り言が耳を打つ。<br />『どちらにしても、こんなところを単機でウロウロするなんておかしい。IFFも味方とは示してないし、確認した方が良さそうだな。』<br />意を決した私は、主翼をバンクさせると機体を反転させる。<br />『ホルスト、編隊から離れるな！』<br />部隊を離れて追尾しようとした私の耳に、険しさを含んだ声が入ってきた。<br />『隊長、すれ違ったファントムを追尾すべきです。』<br />『我々の任務は陸軍の支援だ。それを放り出して戦闘行動は取れん。』<br />私の進言を、ガーランド少佐は強い口調で遮った。<br />『だったら、自分だけでも！』<br />『お前は、列機を置いて行くつもりか！？そんな勝手な行動は許さんぞ！』<br />言い募る私を少佐は一喝した後、幾分口調を和らげて言葉を継いだ。<br />『…まもなく目標のエリアに入る。あの機体は後方の防空部隊に任せれば良い。分かったな？』<br />『……了解。』<br />ユーゲントを連れていることで戦闘行動を取れないことに、ほとほと嫌気を覚えながら私は愛機を元の位置につけ直す。<br />「あと5分か。」<br />この時期にしては珍しい雲ひとつない蒼穹を背景に、20機の戦闘機が歪な編隊を組んで突き進んでいた。<br />その編隊の中央、純白のF－15E＜ストライクイーグル＞の操縦席で、私は酸素マスクの内側で唇を噛み締める。<br />まもなく支援要請があったアイフェル上空に到達する。<br />だが、いざ戦闘入った時、我々の分が悪いことは誰の目にも明らかだった。<br />敵の規模や種類など、支援爆撃を行う上で必要な情報が殆ど入手できていないのだ。<br />手探り状態では、効果的な攻撃も行えないし、仮に敵に対空戦力が存在した場合致命的な損害を蒙る恐れがある。<br />おまけに数こそ20機いるといえ、そのうちの6機は未熟練で実戦行動など期待する方がどうかしている。<br />―――私は溜めていた息をそっと吐き、肩の力を抜いた。<br />（固くなるな…平常心だ。）<br />ヘッド・アップ・ディスプレイに表示される速度の数値はゆっくりと上昇している。<br />状況を考えれば、すぐにでも加速し、高速で突入したいところだが、低空飛行に慣れないユーゲントの実力と、彼らの乗るグリペンの残存燃料を考えると過度な消費はできなかった。<br />『少尉、楽にいきましょう。』<br />後部座席に座るロベルトが明るい声をかけてくる。<br />『ユーゲントのマイナス分はハイマートの連中がカバーしてくれるでしょう。さっきの不明機にしたって、数は1機。もし何かあればもう邀撃機が上がってるはずですし、そんな深刻なことにはなりませんよ。』<br />『それもそうだな。』<br />わざと明るく振舞ってくれるロベルトの心遣いに感謝しながら、私も少し明るい口ぶりで返事をした。<br />予定ではそろそろ陣地が見えてくる頃だ。<br />私は身体を固定しているハーネス越しに右胸を撫でた。<br />そこには、お守り代わりにしている家族とニーナの写真、そして彼女の認識票が入っている。<br />（ニーナ…）<br />私は、遠い故郷に想いをはせながら、目の前の計器類をザッと見回す。<br />すべて問題はなかった。<br />ちらりと兵装パネルにも目をやる。<br />安全装置は随分前に解除し、爆撃モードにセットしてある。<br />この日、私は爆装だったため、対空用の装備は自衛用の赤外線追尾式ミサイルAIM-9L＜サイドワインダー＞4発と20㎜バルカン砲に400発の実弾を搭載しているだけだった。<br />その代わり、翼下にはクラスター爆弾とAGM-65マーベリックミサイルを、それこそ離陸できる限界までえ吊るしている。<br />私は、左肩越しに後方を確認した。<br />列機であるグリペンが1機、辛くも位置を保って飛んでいる。<br />丘陵地帯を抜け、水平飛行に入ったところで、操縦桿を左手に持ち替え、右手をキャノピーにつくと強引に身体を捻って右後方を見た。<br />もう1機もギクシャクとした飛びかたながら何とかついてきている。<br />それを確認して、再び操縦桿を持ち替えながら前を見た。<br />『心配ですね。』<br />ロベルトが少しため息を含んだ口調で訊いてくる。<br />『今のところは大人しくついてきてくれてるが…。可哀想だが、戦闘になったらかまってやる余裕はないな。』<br />私は諦め口調で答えた。<br />しばらく重苦しい沈黙がコクピットの中を満たしていたが、やがていつもの調子に戻ったロベルトが口を開いた。<br />『間もなく、目標上空に入ります。もっとも、この高度じゃあ敵が対空レーダーを装備した部隊だった場合、こちらはとっくの昔に捕捉されてますけど。』<br />『違いない。…やっぱりユーゲントに低空飛行の訓練はするよう進言しなきゃな。』<br />私は僅かに頷きながら低い声で答えた。<br />空は澄み渡り、太陽は地上に暖かな日差しを降り注いでいる。<br />見つけるために、陣地が存在するはずの方向に目を凝らす。<br />（………！！）<br />森林地帯の間に、まるでアクセントとつけたような焼け焦げた大地が広がる。<br />そこに見えたのは、もうもうと立ち上る多数の煙と、時折稲妻のように光る発射炎―――<br />それが何を意味しているのか、誰にでも分かる。<br />『目標を視認…』<br />インターコムでロベルトに告げた後、私は舌打ちをした。<br />『少尉、どうしました？』<br />ロベルトが怪訝そうな声で尋ねてくる。<br />『戦闘が始まってる。』<br />『戦闘中！？』<br />ロベルトの声が高くなった。<br />背後で前を覗き込もうとしているが分かる。<br />『陣地周辺が黒煙と砂煙で殆ど視認できない。最悪だな、こりゃ。』<br />私は緊張感を悟られないように、わざとゆっくりとした口調で話した。<br />『少尉、呆れてる場合ですか。味方は？』<br />ロベルトが幾分緊張した声で言葉を返す。<br />おそらく酸素マスクの下では思い切り顔をしかめていることだろう。<br />『煙の位置からして、だいぶ押し込まれてる。』<br />今、上空から見て取れる情報だけでは、戦況をはっきり認識することは困難だった。<br /><br />編隊が、徐々に高度を上げ始める。<br />着弾の衝撃から機体を守るため安全な高度を取り始めたのだ。<br />もちろん、ユーゲントたちの墜落を防ぐためでもある。<br />直進飛行をしているため、ぐんぐん距離が詰まっていく。<br />それにつれて、戦況が少しずつはっきりとしてきた。<br />凄まじい数の爆発炎が断続的に閃いている。<br />幾重にも張り巡らされた塹壕とトーチカ―――<br />だが、その多くがすでに敵の手によって沈黙させられたらしく、味方の発射炎は数えるほどだ。<br />おそらく、敵の機甲師団に突破されたのだろう。<br />もうぐずぐずしてはいられなかった。<br />自然と武器の選択スイッチに手が延びる。<br />『プリースト3より1、目標は既に交戦中。…どうしますか？』<br />『…だいぶ苦戦してるな。』<br />彼の目にも陣地の状態は分かったはずだ。<br />打つ手を考えているためか、それっきり少佐は押し黙る。<br /><br />沈黙を破ったのは、レシーバーに響いたコーリブリからの焦りを滲ませた声だった。<br />『コーリブリより、作戦行動中の各機へ。アイフェル守備隊より入電。周波数を78.10へ。』<br />『了解。』<br />ガーランド少佐の返事と同時に、私も無線を指定された周波数へと調節する。<br />一瞬の空電音の後、様々な経験に裏打ちされたような力強い声が耳をうった。<br />『友軍機なんて久しぶりに見たな！こちら第13歩兵師団司令部のゲルトルート少佐だ。悪いがご覧のとおりの状況だ。さっそく空から掃除を頼みたい！！』<br />砲弾の炸裂音と発砲音、そして友軍のものと思われる叫び声をBGMにした男の声が響く。<br />『待たせてすまない、第4航空師団第34戦闘飛行隊のガーランドだ。敵の足を止める。ヘルメットの顎紐しっかり締めて、しばらく頭を下げていてくれ。』<br />地上を安心させるためだろう。<br />冗談を交え、砕けた口調でガーランド少佐は言葉を返していた。<br />『プリースト1より編隊各機へ。敵の掃討を開始する。俺とバルクホルンで敵の足を止める。ラーベ隊は、敵の退路を断つ形で爆撃を頼みたい。ホルストは、指示があるまでユーゲントを連れて上空待機。いいな？』<br />『ヤヴォール。』<br />私はそう言いながら肩をすくめた。<br />こちらはこの空域の制空権を握っており、敵を完全に圧倒している状況だ。<br />今、全機で襲いかかり、装備する全ての火器を打ち込めば、それこそ一瞬で駆逐するが可能だろう。<br />それにもかかわらず、ユーゲントたちの安全を第一に確保しようとするガーランド少佐の考えが私にはもどかしかった。<br />ユーゲントたちに指示を出すガーランド少佐の声を聞きながら、私はさらに目を凝らす。<br />黒い箱のようなモノが動き回っているのが見えてきた。<br />おそらく敵の戦車とみて間違いないだろう。<br />『敵勢力、多数を確認。見えないだけで歩兵もいるだろう。ザッとみて、こちらの3倍以上だな。人もモノも余っていて羨ましい限りだ。』<br />ラーベ隊の誰か呆れたような呟きが、目の前の状況を端的に表す。<br />心の中でそれに同意しながら、ふと眼下に目をやった時、オレンジ色の塊がこちらに向けて伸びてきた。<br />1本、2本、3本―――<br />それは数を次々と増やし、飛来してくる。<br />『注意！2時下方に対空砲！！』<br />オレンジ色の光、そう高射機関砲の曳光弾に気がついたロベルトが叫ぶ。<br />その瞬間、やはりボロが出た。<br />今まで編隊を組んで飛んでいたユーゲントの機がいきなり四方八方に散らばり、そうそう当たる筈も無い敵弾から逃れるかのように勝手に回避機動を取り始めたのだ。<br />それに釣られて、ラーベ隊も同じように回避行動に入る。<br />『落ち着け！編隊を維持しろ！』<br />唖然とする私たちを尻目に急旋回、急上昇、降下を繰り返すユーゲント機向けて、ガーランド少佐がイラついた声で怒鳴った。<br />そうしている間にも、編隊は見る間に陣地に近づいていく。<br />一度、接敵をやり直すことも考える程の距離だ…だが、支援が遅れればそれだけ味方にも被害が及ぶ。<br />『だからっ！！』<br />そう叫ぶと、私は爆撃の姿勢を取った。<br />スロットルレバーを壁に叩きつけるように前進させる。<br />F100-PW-229 ターボファンエンジンが唸りを上げて機体を加速させていく。<br />『ホルストッ……編隊から離れるな！』<br />ガーランド少佐の声が耳に届くが、あえて無視をした。<br />加速した機体は、急速に陣地に接近。<br />戦車やその周囲を動き回る歩兵の姿が大きくなってくる。<br />一気に距離を詰め、敵のディティールが判別できる距離にまで近付くと、躊躇うことなく投下ボタンを押した。<br />『投下…』<br /><br />無事に切り離したことを告げる軽い手ごたえが身体に伝わってくる。<br />機体から離れたクラスター爆弾は、一呼吸後、小爆発とともに無数の子爆弾を空中にばら撒いた。<br />今回、愛機にぶら下げてきたクラスター爆弾は、対人・対装甲車両用のCBU-87Bというものだった。<br />子爆弾１つ１つは小型の爆弾であり、鉄筋コンクリートビルやトーチカのような強固な建造物に対する破壊力は低い。<br />つまり、随伴している歩兵や装甲車はともかく、攻撃の核となっている敵戦車への打撃力は期待できなかった。<br />だが、これはあくまでも牽制球。<br />敵の進行方向に投下することで、相手を怯ませるつもりだった。<br />敵にとってこの襲撃のタイミングは、予想と違ったらしい。<br />いや、そもそもベルカ空軍が出てくるはずはないとでも思っていたのだろう。<br />高速で上空を通過する瞬間、遮蔽物に隠れようとする兵士達の姿がちらりと見えた。<br />だが、次の瞬間には無数の子爆弾が彼らに死の雨となって降り注ぐ。<br />地面が波を打ち、永遠に続くかのような地鳴りを起こした。<br />同時に、まるで砂嵐でも起こったように土煙の壁が出来上がる。<br />機首を上げ、高度を取りながら、私は首を振って周囲を確認した。<br />黒々とした葉を茂らす木立の間を何台もの車輌が移動するのが目に映る。<br />一見する限り、装備は最新鋭のオーシア製。<br />この部隊が先遣部隊だとしたら、考えられる組織はただ１つ―――<br />「マリーン・コー（海兵隊）か…」<br />オーシア軍の中でも精鋭部隊とされ、各地の紛争地帯に投入されているオーシア軍の殴りこみ部隊。<br />その勇敢さと展開力たるや、最強を自負するベルカ陸軍を上回るそうだ。<br />だからと言って、他国との連携もなしに戦端を開くとはかなりの力の入れようだ。<br />戦後を見据え、利権配分への発言権を一層強固なものにしようとする意図がありありと分かる。<br />だが、その代償は大きいことを彼らにも教えてやらねばならない。<br />武器を対地攻撃用ミサイルAGM‐65F＜マベリック＞に切り替えて、眼下を見下ろす。<br />気分はまるで獲物を狙う猛禽のようだ。<br />視界の隅に、再度突撃を敢行しようとする戦車が入った。<br />さすが海兵とも言うべきなのだろうか、その勇気ある行動に私は少なからず賞賛を禁じえなかった。<br />だが、未だ立ち直っていない味方にさらなる被害を与え、混乱に拍車をかけることはできない。<br />私は強引な旋回を行うと、目標に機首を向ける。<br />じりじりとした数秒間が過ぎ、やがて、翼下のマベリックの弾頭が敵を感知した音が耳に響いた。<br />『ロックオン！』<br />ロベルトが短く叫ぶ。<br />『………。』<br />私は黙ったまま発射ボタンを押し込んだ。<br />右の翼下から切り離されたミサイルが白煙を曳きながら一直線に飛び出していく。<br />さらにもう一度ボタンを押し、念押しの2発目を放つ。<br />敵の戦車は狙われたことも気がついてないのだろう。<br />わき目も振らず防御陣地に向けて突進を続けている。<br />白く伸びるミサイルの航跡が違うことなく目標に迫っていく。<br />『当たれっ』<br />ロベルトの祈りにも似た呟きが耳に入った。<br />数秒後、命中を知らせる真っ赤な炎が彼方で相次いで花開いた。<br />『スプラッシュ……』<br />（まだくるか…？）<br />いつまでも撃破の余韻に浸る暇はない。<br />操縦桿を右に倒し、思い切り引き付ける。<br />主翼を垂直に立て、右旋回しながら戦車兵が必死になって振り向けようとする対空機関砲を避ける。<br />砲塔上に身をさらし、機関砲を操作する勇気は認めるが、スタンドオフ能力に優れた戦闘爆撃機が相手では、兵士たちの気休め程度の役割にしかならないだろう。<br />やや高度を取り自機の安全を確保すると、私は周囲に視線を廻らせた。<br />バルクホルン機が、私のはるか前方で森に逃げ込もうとする敵をたて続けに撃破している。<br />十分なエアカバーを得られない陸上部隊では、ストライクイーグルの爪から逃れるは不可能な話だった。<br />私の視界に入って数秒後、再び主翼の下から飛び出した白煙が、地上に吸い込まれ大きな火柱を上げさせた。<br />突然の襲撃によって指揮系統が混乱したためか、敵地上部隊の多くは体制を立て直すべく、一時的に部隊を後退させ始めていた。<br />もう一押し、あと一押しで後退から敗走に持ち込むことができる。<br />再び敵部隊へ攻撃をかけるべく、後席のロベルトに話しかけようとした私は、そこで無線から流れ続ける複数のわめき声に気がついて、開きかけた口を閉じた。<br />（ユーゲントたちか？）<br />ザッと周囲を見回すと、あっちこっちでそれらしい機体が飛んでいるのが見えた。<br />敵の姿が見えないのか……明後日の方向でぐるぐると旋回を繰り返している機。<br />ドロップタンクを切り離さないまま飛んでいる機。<br />当たるはずもない距離の敵に対して、闇雲に機関砲を発射している機。<br />なし崩しの初陣となったわけだが、ユーゲントたちは突発的に起こった事態に完全に混乱していた。<br />初めから期待などしてはいなかったが、援護どころかこちらの動きについてくるなど論外だった。<br />レシーバーに飛び込んでくる血相を欠いた声から、その混乱振りは手に取るように分かる。<br />『敵は！　敵は何処にいる？』<br />動転するあまり、敵が見えないのだ。<br />『ロケット弾が発射できません！　撃てないっ！』<br />動転するあまり、安全装置の解除を忘れているのだろう。<br />『敵の対空砲がこちらを狙ってきてます！避けれないっ！！』<br />そんな対空砲など、何処にもない。<br />「落ち着けっ！もっと視野を広くしろ！」<br />私は、焦燥感を隠せなかった。<br />再び前方へ向き直った先に、こちらに砲塔を向けたM163対空自走砲が視界に入ってくる。<br />機甲部隊お抱えの対空戦車だろう。<br />とっさにバレルロールをうったのと、敵の機関砲が鈍い煌きを放ち、曳光弾が機体を掠めていったのはほぼ同時だった。<br />『次も当たらないという保証はありませんからね。』<br />ロベルトが今にも泣きだしそうな声で言った。<br />『そう言うなよ。』<br />私は、動揺を隠すため努めてのんびりした声で返事をした。<br />それ以上お互いに手を出さないまま、至近距離を高速ですれ違う。<br />ここでようやく味方陣地からの反撃が始まった。<br />反撃の口火を切ったのは、陣地正面に据え付けられた1基の対戦車砲。<br />敵の前衛から200mほどの位置だろうか。<br />その対戦車砲から真っ赤な発射炎が煌く。<br />それがきっかけになったのだろうか、生き残っていた火器群が猛然と火を噴いた。<br />幾重にも掘られた塹壕の中から1発のミサイルが飛ぶ。<br />生き残った8基の対戦車砲が独自の判断で連続的な発砲を続ける<br />高射機関砲が、それで戦車の破壊はできないと知りつつ、いくらかの効果を狙って40mm機関砲を撃つ。<br />実際のところ、味方の対戦車砲PaK95の55口径120㎜滑空砲をもってしても、エイブラムスの強靭な正面装甲を打ち抜ける可能性は低い。<br />逆に対戦車砲の装甲板など、戦車砲の前は紙にも等しい。<br />実際、敵が損害を気にすることなく、圧倒的な物量で攻勢に転じていれば勝負は一方的についていたのかもしれない。<br />だが、敵にはそれができなかった。<br />上空を飛び回る我々に狙い撃ちされることを必要以上に恐れたのだ。<br /><br />戦線の崩壊が始まった。<br />まず、敵の歩兵隊の前に煙幕の壁ができはじめた。<br />続いて生き残った各戦車が全周囲に煙幕弾を展開し、装甲車もそれに続く。<br />見通しの悪い森林地帯では、それで十分だった。<br />完全に煙で覆い隠された敵機甲師団は、間違いなく撤退を始めているだろう。<br />私は上空で緩やかな旋回を続けながら、味方の陣地に視線を下ろす。<br />対戦車砲は、今もなお真っ白な煙の中に向けて発砲を繰り返していた。<br /><br />同時刻　アイフェル防衛陣地　第1対戦車砲壕<br /><br />甲高い排気音と、聞きなれない連続した炸裂音にエーベル大尉は目を覚ました。<br />見上げれば、ハッセが自分を抱きかかえたまま呆然と空を見上げていた。<br />どれくらい気を失っていたのだろうか、いつの間にか上空には戦闘機が舞っている。<br />その翼には、見かけなくなった友軍を示す記章―――<br />周辺の空軍がなけなしの航空機を出してくれたのだろう。<br />「……何してる、ハッセ二等兵。」 <br />「大尉殿……！！」 <br />エーベル大尉は血塗れの顔でニヤリと笑うと、ハッセの肩をポンと叩いた。 <br />「お前の仕事は、砲手だ。それが、何もせずにどうした？」 <br />エーベル大尉は指揮を続けようと、身体を動かそうとするが、背中から頭にかけての裂傷の痛みにうめき声をあげる。<br />そんな大尉の姿をみて、ハッセの心は決まった。<br />ハッセは黙って頷くと、大尉を通信兵が立っていた場所に横たえて素早く砲手席に戻る。 <br />「大尉殿は？」<br />隣の壕から、クリストファー少尉が尋ねてくる。<br />通信兵が有線通信を切断したため、周囲の騒音に負けじと大声を張り上げるものの、微かにしか聞き取れない。<br />「大尉殿は大丈夫です！」<br />ハッセは照準器を覗き込んだ。<br />敵戦車群は、砲座から300ｍほどの地点でクモの子を散らすように散開を始めていた。<br />同じ色をした数機の戦闘機が、逃げ惑う敵戦車を駆り立てている。<br />敵戦車はすでにこちらを相手にするどころではない状況に陥っていた。<br />「少尉殿！誰かこちらに寄こして頂けませんか！砲弾の装填をお願いします！」 <br />「何を言ってるんだ！　空軍の支援中にエーベル大尉を担いで退がるのが先決だ！」<br />「今なら、敵を奇襲できます。1人で結構です！急いでください！」<br />クリストファー少尉からの返事はそれっきり途絶えた。<br />ハッセが砲の点検をしていると、少尉が坑道を通って砲座に入ってくる。<br />手には、どこからか調達してきた大型救急箱を持っていた。<br />「大尉殿！」 <br />クリストファー少尉は、救急箱から脱脂綿と包帯を取り出すと、応急手当を始めようとする。 <br />「クリス、俺のことはいい。ハッセを手伝ってやれ。」 <br />「しかし、大尉……」 <br />「いいから、やれ！」 <br />大尉の大声にクリストファー少尉は驚き、慌てて砲弾を抱える。<br />防弾板が欠けた程度で砲自体に不具合はない。<br />ハッセは再びパッドに顔を押しつけると、装填手の位置についたクリストファー少尉に怒鳴った。 <br />「少尉殿、撃ったらすぐに装填してください！連続射撃を実施します！！」 <br />「わ、わかった」 <br />ハッセは砲を気づかれないように、少しずつゆっくり回した。<br />味方の爆撃を避けるため、敵の戦車や歩兵は物陰に身を隠そうとしている。<br />照準器の真ん中に、樹の陰に隠れるM1エイブラムス戦車の無防備な姿が納まった。<br />ハッセは引き金を引き絞る。 <br />発射音と同時に命中音が響く。<br />命中したAPFSDSは、比較的薄い後部を貫通し砲塔内の弾薬庫を誘爆させる。<br />自動消火システムで守られた乗員がハッチから転がり出ていくのが見えた。<br />「次弾装填！」 <br />言うが早いか、安全装置が解除されたことを示すランプが点灯する。<br />彼は砲を旋回させると、歩兵を乗せ林に逃げ込もうとするAAV7A1水陸両用強襲車に照準をつけた。<br />徹甲弾が撃ちだされる。<br />AAV7A1は射弾をかわそうとして、先に破壊されたM1にぶつかって停車する。<br />そこに徹甲弾が命中、AAV7A1は炎を吹き上げ動かなくなった。<br />敵に混乱が起こりはじめる。<br />航空攻撃をかわそうと茂みに隠れれば、どこからともなく狙い撃たれ、その砲撃を避けようと動けば航空機に見つかるのだ。<br />ハッセは照準の微調整も構わず次々と砲撃を続けた。<br />時々榴弾が炸裂し、辺りに土混じりの破片をばらまく。 <br />撃っていなくては、恐くてどうしようもなかった。<br />装填を担当しているクリストファー少尉もそうであった。<br />彼の場合、外を見る暇がない分恐怖感が大きいのだ。 <br />徹甲弾も榴弾も発煙弾も構わず、触った砲弾を次から次へと装填する。<br />前方が、発煙弾が作り出す白い煙で覆われ始めた。<br />彼は、その中に目掛け闇雲に砲弾を放った。<br />時々、命中したような手ごたえもあったが、どれだけの損害を与えたかはわからない。<br />不意に煙幕が濃さを増した。<br />敵の陸上部隊が煙幕を展開したのだ。<br />ハッセは射撃をやめて、敵の出方を伺う。<br />上空の航空機も深追いを止め、高度を取ってゆっくりと旋回を繰り返している。<br />しばらくの間、敵の戦車と思われるエンジン音と、敵の兵士が発する聞き取れない言葉が響いていたが、それも段々静かになっていった。<br />煙幕が晴れた時、そこには撃破された車輌の残骸と、くすぶり続ける樹々があるだけだった。<br />40％以上の損害を出しながらも、防衛陣地は今回も敵の攻勢を凌ぎきったのだ。<br />彼らの戦力差を考えた時、それは奇跡とも思える結果であった。<br />ハッセは深いため息をつくと、額の汗をぬぐった。<br />喉は渇き、吸い込んだ砂で口の中がジャリジャリとする。<br />クリストファー少尉も上着を脱いで、水筒の水を頭から被った。<br />「……よくやったぞ、二人とも。」<br />エーベル大尉の言葉に、ハッセとクリストファー少尉は顔を見合わせて照れ笑いをした。 <br />その上空を、空軍の戦闘機たちが翼を振りながら通過していく。<br />戦争全体では局地的な勝利だったのかもしれない。<br />だが、彼らの支援がなければ今日のささやかな勝利はなかったはずだ。<br />―――ありがとう。<br />次々と通過していく空軍機に向けてハッセとクリストファー少尉は大きく手を振った。<br /><br />1995年5月27日　午前9時58分　南ベルカ　アイフェル防衛陣地上空6,000フィート<br /><br />どれくらい時間が経っただろうか―――<br />旋回を止め、機を水平に戻したとき、すでに地上の煙幕は薄れ始めていた。<br />思ってもみない航空機の出現に敵の方でも慌てたのだろうが、これが事前の打ち合わせなら見事なものだ。<br />通り魔のような引き際のよさは、部隊の損害を最小限にとどめるための条件でもある。<br />すでに周囲は友軍だけになっていた。<br />多くの兵士たちがこちらを見上げているのが分かる。<br />『全機集合。繰り返す、全機集合。』<br />友軍機に呼びかけるガーランド少佐の声は心なしか上ずっている。<br />よたよたと集合を始める列機を見やりながら、私も少佐の機に愛機を接近させた。<br />『コーリブリ、コーリブリ。こちらプリースト1。応答願います。』<br />地上の管制官は、呼びかけを始めて４度目にようやく返事を返してきた。<br />『プリースト1。こちらコーリブリ。無事ですか？状況を報告してください。』<br />こういう遣り取りの間にも、息の荒さが伺えた。<br />集合したのは、わずかに6機。<br />ハイマート基地の部隊は早々と全機揃っての引き上げ始めたが、我々の方はユーゲントたちの乗るグリペンが3機足りない。<br />敵にやられたのか、それとも途中で離脱したのか―――現時点では全く分からなかった。<br />侵攻してきた敵陸上部隊は撃退できた。<br />だが、防御陣地は所々炎を上げ、二度と使用できないほど破壊された箇所も少なくない。<br />せめてもの救いは、多くの陸軍兵士が無事でこちらに大きく手を振ってくれていることだろう。<br />ノックダウンとはいかないまでも、判定で我々の勝ちと言って良かった。<br />ヘルメットのバイザーを上げ、酸素マスクを外した時、奇妙な視線に気付いて私はその方向へ首を廻らせる。<br />いつの間にか、隣に接近していたストライクイーグルのコックピットから、ガーランド少佐がこちらを見つめていた。<br />その険しい視線に、私はコックピットの中で無言のまま視線を伏せるしかなかった。 ]]>
</content:encoded>
<dc:subject>紺碧の空</dc:subject>
<dc:date>2009-11-04T12:17:44+09:00</dc:date>
<dc:creator>viper</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
</item>
</rdf:RDF>